114(2019) F-38
5歳男児、夜尿
5歳の男児。夜尿を主訴に父親に連れられて来院した。毎晩夜尿があり、これまでに夜間おむつがとれたことがない。日中の尿失禁はないという。尿所見:比重1.030、蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)、沈渣は赤血球0〜1/HPF、白血球1〜4/HPF。腹部超音波検査で両側の腎と膀胱とに異常を認めない。
父親への説明として適切でないのはどれか。
a 「就寝前に完全に排尿させましょう」
b 「睡眠中の冷えから身体を守りましょう」
c 「水分は昼過ぎまでに多めに摂らせましょう」
d 「おねしょをしても叱らないようにしましょう」
e 「夜間の決めた時間に起こして排尿させましょう」
<問題文の読み方>
5歳の男児。夜尿を主訴に父親に連れられて来院した。毎晩夜尿があり、これまでに夜間おむつがとれたことがない。日中の尿失禁はないという。尿所見:比重1.030、蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)、沈渣は赤血球0〜1/HPF、白血球1〜4/HPF。腹部超音波検査で両側の腎と膀胱とに異常を認めない。
父親への説明として適切でないのはどれか。
太字が必要な情報です。
患者 5歳男児
主訴 毎晩の夜尿、日中の禁制は正常
尿所見 比重1.030
適切でなのはどれか?
a 「就寝前に完全に排尿させましょう」 〇
b 「睡眠中の冷えから身体を守りましょう」 〇
c 「水分は昼過ぎまでに多めに摂らせましょう」 〇
d 「おねしょをしても叱らないようにしましょう」 〇
e 「夜間の決めた時間に起こして排尿させましょう」 ×
正答率60%台の問題です。eがわからないでも、a~dが〇が明らかなので、eが正解と導き出せます。ガイドラインでは、夜間睡眠中に強制的に起こすのは避けるべきだとされています。
「おねしょ」=夜尿症(nocturnal enuresis:NE)は,「(夜間)睡眠中に不随意に尿を漏らす」ことです。夜尿症ガイドライン2016によると、『「おねしょ」は発達とともに解消していき,5 歳の時点で 20% 程度の小児でみられる.この児たちは「夜尿症」と診断され,その後も年間に 10~15% ずつは自然軽快していくが,高校入学の段階で約 3% が依然として解消していない.小学校入学時期の 6 歳頃からが治療の対象になると考えられているが,日本の小中学生の罹病率は約 6.4%
と推察され,アレルギー疾患に次いで頻度の多い慢性疾患である』とされています。国際小児尿禁制学会(International
Childrenʼs Continence Society:ICCS)により「5 歳以降で,1 か月に 1 回以上の夜尿が 3 か月以上続くもの」が夜尿症と定義されています。
日本においても夜尿症の治療の生活指導として次のようなものが指導されています(夜尿症ガイドライン2016 CQ5)
①日中に十分な飲水
②朝食・昼食を十分に摂り,夕食を就寝 2 時間前に済ませる
③夕食後は水分制限を行う(コップ 1 杯程度まで)
④就寝 2 時間前からの水分摂取は控えめにする
⑤就眠前の完全排尿の励行
⑥深い睡眠と関連する抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone:ADH)分泌のため遅寝を避ける
⑦夜間睡眠中に中途覚醒を強制しない
⑧睡眠中の寒さや冷えから身体を守る
夜間睡眠中に強制的に起こして排尿させると夜間の膀胱容量を低下させる.また,睡眠中の ADH 分泌量に影響を及ぼし,夜間尿量をかえって増やすことになるとされています。ただし短期の宿泊行事(修学旅行やキャンプ)など限定的な場合に限っては,夜間に起こすことは検討してもよいとされています。
夜尿症の治療でエビデンスのあるものは、アラーム療法とデスモプレシン療法です。詳しくはガイドライン等で見てみて下さい。
<参考URL>
夜尿症ガイドライン2016
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/nocturnal-enuresis/nocturnal-enuresis.pdf
日本夜尿症学会
http://www.jsen.jp/
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