A-73
41歳の女性。高血圧、頭痛および脱力を主訴に来院した。3年前から高血圧症に対して、自宅近くの診療所でカルシウム拮抗薬を投与されていたが、血圧は150/80
mmHg前後の高値が持続していた。1年前から頭痛と脱力も自覚するようになったため受診した。血液検査では血清カリウムが2.8 mEq/Lと低下していた。二次性高血圧症を疑って施行した安静臥位30分後の採血では、血漿レニン活性0.1 ng/mL/時間基準1.2〜2.5、血漿アルドステロン濃度231 pg/mL(基準30〜159)であった。腹部単純CTでは異常所見を認めない。診断のために行うべき検査はどれか。3つ選べ。
a 生理食塩水負荷試験
b カプトプリル負荷試験
c デキサメサゾン抑制試験
d フロセミド立位負荷試験
e MIBG 副腎シンチグラフィ
<問題文の読み方>
41歳の女性。高血圧、頭痛および脱力を主訴に来院した。3年前から高血圧症に対して、自宅近くの診療所でカルシウム拮抗薬を投与されていたが、血圧は150/80 mmHg前後の高値が持続していた。1年前から頭痛と脱力も自覚するようになったため受診した。血液検査では血清カリウムが2.8 mEq/Lと低下していた。二次性高血圧症を疑って施行した安静臥位30分後の採血では、血漿レニン活性0.1 ng/mL/時間基準1.2〜2.5、血漿アルドステロン濃度231 pg/mL(基準30〜159)であった。腹部単純CTでは異常所見を認めない。診断のために行うべき検査はどれか。3つ選べ。
太字が必要な情報です。
年齢性別: 41歳の女性
主訴: 高血圧、頭痛および脱力
臨床経過: 3年前から高血圧、1年前から頭痛と脱力
検査結果: 血清カリウム2.8 mEq/L
血漿レニン活性0.1 ng/mL/時間基準1.2〜2.5、
血漿アルドステロン濃度231 pg/mL(基準30〜159)
設問: 診断のために行うべき検査はどれか。3つ選べ。
の順に追っていきます。
<解説>
頻出問題ですが、良く練られた良問です。副腎ホルモンに関係した病気の診断、治療を正しく理解していないと解けません。レニン・アルドステロン比が2310であり、原発性アルドステロン症のスクリーニングの上限である200を超えています。高血圧、頭痛、脱力、低カリウムより原発性アルドステロン症が最も疑わしい所見です。(a, b, d)が正解になります。
a 生理食塩水負荷試験 〇
b カプトプリル負荷試験 〇
c デキサメサゾン抑制試験 × クッシング症候群の診断
d フロセミド立位負荷試験 〇
e MIBG 副腎シンチグラフィ × 褐色細胞腫の画像検査
生理食塩水負荷試験
アルドステロン自律分泌を確認することを目的とする。本邦以外ではゴールドスタンダードとされている試験である。生食2Lを4時間で点滴静注を行い,投与前後でPRAおよびPACを測定する。PAでは循環血漿量を増加させてもPACが低下しないことを確認する。すなわち,負荷後のPACが60pg/mlを下回らない場合に陽性と判断する。心・腎機能を検査前に十分に評価を行い,高血圧ならびに低カリウム血症のコントロールが必要である。
カプトプリル試験
外来でも実施可能な簡便な検査である。アルドステロン自律分泌を確認することを目的としている。すなわち,ACE阻害薬であるカプトプリルによりアンギオテンシンⅡを低下させても,PACが低下しないことを確認する。カプトプリル内服前,内服60分後,90分後に採血を行い,ARR(60分ないし90分後)>200を陽性と判定する。感度は優れるものの,特異度はやや低い。
フロセミド立位試験
レニン分泌を刺激し,レニン分泌抑制の程度を評価することでアルドステロン過剰分泌を機能的に評価することを目的とした試験である。フロセミド40mgを静注後,2時間立位を保持し,立位のまま採血を行う。循環血漿量が減少してもレニンが抑制されたままであることを確認する。2時間後のPRA値が2.0ng/ml/h未満で陽性と診断する。脳心血管イベントリスクの高い症例・不整脈が誘発されうる症例に対しては行わない。
<リンク>
日本内分泌学会「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine/92/Suppl.September/92_pre1/_pdf
原発性アルドステロン症の診断―最新のコンセンサスステートメントより―
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/35/1/35_2/_pdf/-char/ja