2020年6月28日日曜日

013 [第114回医師国家試験(2019年度) E-41] 基礎問題 カテーテル操作

E-41 カテーテル留置で正しいのはどれか。

a 挿入時は患者を側臥位にする。

b 陰茎に潤滑剤を塗布した後に消毒を行う。

c 陰茎は垂直方向に軽く引き上げるように保持する。

d 蓄尿バックは膀胱と同じ高さの位置でベッド柵に固定する。

e 挿入途中で抵抗が強い場合、その位置でバルーンを膨らませる。

 

<解説>

カテーテル留置正しいのはどれか

a 挿入時は患者を側臥位にする。                                      × 仰臥位で試行

b 陰茎に潤滑剤を塗布した後に消毒を行う。                       × 消毒が先

c 陰茎は垂直方向に軽く引き上げるように保持する。           〇 正解

d 蓄尿バックは膀胱と同じ高さの位置でベッド柵に固定する。 × 逆流防止のため低くする

e 挿入途中で抵抗が強い場合、その位置でバルーンを膨らませる。 × 尿道損傷

 

カテーテル留置手技の基本を問われています。(c)が正解になります。このような実践医療の問題は教科書で勉強することが難しく、国家試験対策には臨床実習での経験が必要であることが示されています。


2020年6月27日土曜日

012 [第114回医師国家試験 E-39 ] 71歳男性、排尿困難、夜間頻尿

E-39

71 歳の男性。6か月前からの排尿困難と夜間頻尿を主訴に来院した。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。身長 162 cm、体重 60 kg。体温 36.4 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 154/82 mmHg。呼吸数 14/分。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。直腸指診で横径 40 mm 程度の前立腺を触知するが硬結を認めない。尿所見:蛋白(-)、糖(-)、沈渣に赤血球と白血球とを認めない。血清 PSA 2.5ng/mL(基準4.0 以下)。国際前立腺症状スコア 28 (軽症07点、中等症819点、重症 2035)。腹部超音波検査で推定前立腺体積 60 mL。尿流測定で排尿量 120 mL、最大尿流率 2.5 mL/秒、残尿量 240 mL。治療薬として適切でないのはどれか。

************

 

a α1 遮断薬

b 抗コリン薬

c 抗男性ホルモン薬

5 α 還元酵素阻害薬

PDE 5(phosphodiesterase 5)阻害薬

 

<問題文の読み方>

71 歳の男性6か月前からの排尿困難と夜間頻尿を主訴に来院した。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。身長 162 cm、体重 60 kg。体温 36.4 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 154/82 mmHg。呼吸数 14/分。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。直腸指診で横径 40 mm 程度の前立腺を触知するが硬結を認めない。尿所見:蛋白(-)、糖(-)、沈渣に赤血球と白血球とを認めない。血清 PSA 2.5ng/mL(基準4.0 以下)国際前立腺症状スコア 28 (軽症07点、中等症819点、重症 2035)。腹部超音波検査で推定前立腺体積 60 mL。尿流測定で排尿量 120 mL、最大尿流率 2.5 mL/秒、残尿量 240 mL治療薬として適切でないのはどれか。

 

太字が必要な情報です。

年齢性別:         71 歳の男性

主訴:               6か月前からの排尿困難と夜間頻尿

問診:               国際前立腺症状スコア 28

理学所見:         直腸指診で横径 40 mm 程度の前立腺を触知

画像評価:         腹部超音波検査で推定前立腺体積 60 mL

尿流検査:         排尿量 120 mL、最大尿流率 2.5 mL/秒、残尿量 240 mL

設問:               治療薬として適切でないのはどれか。

の順に追っていきます。

 

<解説>

本症例において、前立腺肥大症の診断は容易です。前立腺肥大症の治療薬は頻出であり、覚えおく必要があります。「頻尿の訴え」のみを聞いて、「膀胱の活動性を抑える薬」(=抗コリン薬)を処方すると、尿閉を誘発してしまうことになります。実際の臨床で時に遭遇する間違った治療です。気を付けてください。答えは()になります。この間違った処方は、高齢女性の頻尿の訴えでおきることもあり、頻尿の原因が神経因性膀胱で残尿が多い状態で抗コリン薬を処方内服してしまうと尿閉を引き起こしてしまうケースが少なからずあります。決して処方しないように。

 

a α1 遮断薬                                        

b 抗コリン薬                                         × 膀胱収縮を抑制し、尿閉を誘発する可能性あり。

c 抗男性ホルモン薬                                〇(△) 

5 α 還元酵素阻害薬                           

PDE 5(phosphodiesterase 5)阻害薬    

 


2020年6月24日水曜日

011 [第114回医師国家試験 D-57] 65歳女性、発熱・悪寒

D-57

65 歳の女性。発熱と悪寒を主訴に来院した。意識レベルは JCS-10。身長 155cm、体 重 68 kg。体 温 38.8 ℃。脈 拍 96/分、整。血 圧 92/52 mmHg。呼吸数28分。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。右背部叩打痛を認める。尿所見:蛋白1+、糖(-)­、ケトン体(-)­、潜血1+、沈渣は赤血球 1050/HPF、白血球5099/HPF。血液所見:赤血球434 万、Hb 11.8 g/dLHt 37 %、白血球2,200、血小板 22 万。血液生化学所見:総蛋白 6.5 g/dL、アルブミン 2.8 g/dLAST 19 U/LALT 19 U/L、尿素窒素 12 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dLCRP21 mg/dL。血液培養と尿培養の検体を採取し、生理食塩液による輸液を行ったが、血圧低下の改善はみられず、カテコラミンと抗菌薬の投与を開始した。腹部CT別冊No. 25A、B­を別に示す。

直ちに行うべき処置はどれか。

 

 

a 尿道切開術

b 膀胱瘻造設

c 経尿道的尿管砕石術

d 尿管ステント留置術

e 体外衝撃波結石破砕術

 

<問題文の読み方>

65 歳の女性発熱と悪寒を主訴に来院した。意識レベルは JCS-10。身長 155cm、体 重 68 kg体 温 38.8 。脈 拍 96/分、整。血 圧 92/52 mmHg呼吸数28。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。右背部叩打痛を認める。尿所見:蛋白1+、糖(-)­、ケトン体(-)­、潜血1+、沈渣は赤血球 1050/HPF白血球5099/HPF。血液所見:赤血球434 万、Hb 11.8 g/dLHt 37 %白血球2,200、血小板 22 万。血液生化学所見:総蛋白 6.5 g/dL、アルブミン 2.8 g/dLAST 19 U/LALT 19 U/L、尿素窒素 12 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dLCRP21 mg/dL血液培養と尿培養の検体を採取し、生理食塩液による輸液を行ったが、血圧低下の改善はみられず、カテコラミンと抗菌薬の投与を開始した。腹部CT別冊No. 25A、B­を別に示す。

直ちに行うべき処置はどれか。

 

 

太字が必要な情報です。

年齢性別:         65 歳の女性

主訴:               発熱と悪寒

理学所見:         意識レベル JCS-10、右背部叩打痛

検査結果:         尿白血球5099/HPF L、白血球2,200CRP21 mg/dL

臨床情報:         生理食塩液による輸液を行ったが、血圧低下の改善はみられず、カテコラミンと抗菌薬の投与を開始

設問:               直ちに行うべき処置はどれか。

の順に追っていきます。

 

<解説>

CTで右水腎(A)、右尿管結石(B)が診断されます。本文からは重症尿路感染症で、ショック状態。白血球が低下するほどの重症で危険な状態です。よって、結石関連性急性腎盂腎炎によるショック状態と診断されます。全身管理をしつつ感染源のドレナージ、すなわち右水腎の改善の処置が必要です。

尿路閉塞症状を伴う重症尿路感染症はショックで心肺停止を引き起こす場合もあり、緊急処置が必要な疾患です。

 

a 尿道切開術                 × 尿道は関係ありません。

b 膀胱瘻造設                 × 膀胱が問題ではありません。

c 経尿道的尿管砕石術     × 活動性の尿路感染の状態での施行は禁忌です。

d 尿管ステント留置術     〇 正解

e 体外衝撃波結石破砕術  × 活動性の尿路感染の状態での施行は禁忌です。

 

よって(d)が正解になります。実際の臨床では、腎瘻による尿流確保のほうが確実なので、腎瘻とするか尿管ステントを行うかどうかを検討します。ショックにより心肺停止に至り、気管内挿管腎盂呼吸に至ったなかで、緊急で腎瘻による尿流確保を行うことが時に遭遇します。体位の保持が制限されるなど、難易度の高い腎瘻造設ですが、必ず成功させなければなりません。上部尿路閉塞+尿路感染症は命に関わる重大な病であることを覚えておいて下さい。


010 [第114回医師国家試験 D-27] 71歳女性、排尿困難、会陰部腫瘤

D-27

71 歳の女性。排尿困難を主訴に来院した。1年前から会陰部腫瘤を自覚していたが、自分で腫瘤を元に戻していたという。3か月前から排尿困難が出現したため受診した。身長 156 cm、体重 55 kg。体温 36.6 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 132/72mmHg。血液所見:赤血球350 万、Hb 11.2 g/dLHt 34 %、白血球4,000、血小板 25 万。血液生化学所見:尿素窒素23 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dLNa144 mEq/LK 4.2 mEq/LCl 100 mEq/LCRP 0.7 mg/dL。外陰部の写真(別冊No. 10)­を別に示す。診断はどれか。

 

a 直腸脱

b 膀胱瘤

c 外陰Paget

d 尿道カルンクル

e 尖圭コンジローマ

 

<問題文の読み方>

71 歳の女性排尿困難を主訴に来院した。1年前から会陰部腫瘤を自覚していたが、自分で腫瘤を元に戻していたという。3か月前から排尿困難が出現したため受診した。身長 156 cm、体重 55 kg。体温 36.6 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 132/72mmHg。血液所見:赤血球350 万、Hb 11.2 g/dLHt 34 %、白血球4,000、血小板 25 万。血液生化学所見:尿素窒素23 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dLNa144 mEq/LK 4.2 mEq/LCl 100 mEq/LCRP 0.7 mg/dL外陰部の写真(別冊No. 10)­を別に示す。診断はどれか。

 

太字が必要な情報です。

年齢性別:         71 歳の女性

主訴:               排尿困難

臨床経過:         1年前から会陰部腫瘤、3か月前から排尿困難

画像評価:         外陰部の写真

設問:               まず行う処置として適切なのはどれか。

の順に追っていきます。

 

<解説>

厚生労働省ホームページ上で写真は非公開となっています。肝心の写真がないのは痛いですが、臨床所見より膀胱瘤であると診断されます。

 

a 直腸脱                       ×  肛門から直腸壁全層が脱出する病気。排便が問題になる。

b 膀胱瘤                      

c 外陰Paget             × 女性の外陰部に発生する皮膚がんの一種

d 尿道カルンクル           × 排尿障害を引き起こしません。

e 尖圭コンジローマ        × ヒトパピローマウイルス (HPV)感染症、排尿障害と関係なし

 

よってbが正解になります。


2020年6月23日火曜日

009 [第114回医師国家試験 D-13] 泌尿器科解剖

D-13 泌尿生殖器の解剖で正しいのはどれか。2つ選べ。

a 尿膜管は膀胱三角部に開口する。

b 射精管は前立腺部尿道に開口する。

c 右副腎静脈は右腎静脈に流入する。

d 精巣動脈は内腸骨動脈から分枝する。

e 尿管には3か所の生理的狭窄部位がある。

 

<解説>

知識問題です。

a 尿膜管は膀胱三角部に開口する。                       × 尿膜管は膀胱頂部に開口します。

b 射精管は前立腺部尿道に開口する。                   

c 右副腎静脈は右腎静脈に流入する。                    × 右副腎静脈は下大静脈に流入します。

d 精巣動脈は内腸骨動脈から分枝する。                 × 精巣動脈は腹部大動脈より分枝します。

e 尿管には3か所の生理的狭窄部位がある。         

 

よって正解は(b, e)になります。泌尿器科解剖の基礎です。ぜひ覚えてください。

 


2020年6月21日日曜日

007 [第114回医師国家試験 C-55] 78歳男性、排尿障害

C-55

78 歳の男性。排尿障害を主訴に来院した。2年前から尿勢の減弱を自覚していたという。3か月前からは頻尿および残尿感が出現し、昨日から症状が強くなり受診した。内服薬はない。意識は清明。身長 165 cm、体重 63 kg。体温 36.2 ℃。脈拍 80/分、整。血圧148/86 mmHg。呼吸数 16/分。下腹部に膨隆を認める。尿所見:蛋白(‑) 、糖(‑) 、ケトン体(‑)、潜血1+、沈渣に赤血球59/HPF、白血球59/HPF。血液所見:赤血球 476 万、Hb 13.8 g/dLHt 39 %、白血球5,200、血小板 24 万。血液生化学所見:尿素窒素 28 mg/dL、クレアチニン4.4mg/dLNa 137 mEq/LK 5.0 mEq/LCl 114 mEq/L。腹部超音波像別冊No.11A〜C を別に示す。

まず行うべきなのはどれか。

 

a 血液透析

b 腎瘻造設術

c 利尿薬投与

d 尿管ステント留置

e 尿道カテーテル留置

 

<問題文の読み方>

78 歳の男性。排尿障害を主訴に来院した。2年前から尿勢の減弱を自覚していたという。3か月前からは頻尿および残尿感が出現し、昨日から症状が強くなり受診した。内服薬はない。意識は清明。身長 165 cm、体重 63 kg。体温 36.2 ℃。脈拍 80/分、整。血圧148/86 mmHg。呼吸数 16/分。下腹部に膨隆を認める。尿所見:蛋白(‑) 、糖(‑) 、ケトン体(‑)、潜血1+、沈渣に赤血球59/HPF、白血球59/HPF。血液所見:赤血球 476 万、Hb 13.8 g/dLHt 39 %、白血球5,200、血小板 24 万。血液生化学所見:尿素窒素 28 mg/dLクレアチニン4.4mg/dLNa 137 mEq/LK 5.0 mEq/LCl 114 mEq/L。腹部超音波像別冊No.11A〜C を別に示す。

まず行うべきなのはどれか。

 

太字が必要な情報です。

年齢性別:         78 歳の男性

主訴:               排尿障害

臨床経過:         2年前から尿勢の減弱を自覚、3か月前からは頻尿および残尿感

理学所見:         下腹部に膨隆

検査結果:         クレアチニン4.4mg/dL

設問:               まず行うべきなのはどれか。

の順に追っていきます。

 

<解説>

腎後性腎不全を問う問題です。j本年は腎後性腎不全の問題が2問出題されています(参照A34)。今後も出題される可能性の高い項目だと思います。本症例における腹部超音波の所見は特徴的で、両側水腎、尿閉の所見です。尿閉に伴う両側水腎、腎後性腎不全と診断されます。よって、(e)の尿道カテーテル留置が最もふさわしい治療になります。本症例は尿道カテーテル留置後には腎不全の利尿期に入り、血管内脱水を予防するために必要十分な点滴による補液が必用です。

 

a 血液透析                    × まず行う治療ではありません。

b 腎瘻造設術                 × 尿管狭窄等の上部尿路障害による腎後性腎不全には適応です。

c 利尿薬投与                 × 腎後性腎不全に対する治療としては不適切です。

d 尿管ステント留置        × 尿管狭窄等の上部尿路障害による腎後性腎不全には適応です。

e 尿道カテーテル留置    


2020年6月16日火曜日

006 [第114回医師国家試験 A-73] 41歳女性、高血圧・頭痛・脱力

A-73

41歳の女性。高血圧、頭痛および脱力を主訴に来院した。3年前から高血圧症に対して、自宅近くの診療所でカルシウム拮抗薬を投与されていたが、血圧は150/80 mmHg前後の高値が持続していた。1年前から頭痛と脱力も自覚するようになったため受診した。血液検査では血清カリウムが2.8 mEq/Lと低下していた。二次性高血圧症を疑って施行した安静臥位30分後の採血では、血漿レニン活性0.1 ng/mL/時間基準1.22.5­、血漿アルドステロン濃度231 pg/mL(基準30159­であった。腹部単純CTでは異常所見を認めない。診断のために行うべき検査はどれか。3つ選べ。

 

a 生理食塩水負荷試験

b カプトプリル負荷試験

c デキサメサゾン抑制試験

d フロセミド立位負荷試験

MIBG 副腎シンチグラフィ

 

<問題文の読み方>

41歳の女性。高血圧、頭痛および脱力を主訴に来院した。3年前から高血圧症に対して、自宅近くの診療所でカルシウム拮抗薬を投与されていたが、血圧は150/80 mmHg前後の高値が持続していた。1年前から頭痛と脱力も自覚するようになったため受診した。血液検査では血清カリウムが2.8 mEq/Lと低下していた。二次性高血圧症を疑って施行した安静臥位30分後の採血では、血漿レニン活性0.1 ng/mL/時間基準1.22.5­、血漿アルドステロン濃度231 pg/mL(基準30159­であった。腹部単純CTでは異常所見を認めない。診断のために行うべき検査はどれか。3つ選べ。

 

太字が必要な情報です。

年齢性別:         41歳の女性

主訴:               高血圧、頭痛および脱力

臨床経過:         3年前から高血圧、1年前から頭痛と脱力

検査結果:         血清カリウム2.8 mEq/L

血漿レニン活性0.1 ng/mL/時間基準1.22.5­

血漿アルドステロン濃度231 pg/mL(基準30159­

設問:               診断のために行うべき検査はどれか。3つ選べ。

の順に追っていきます。

 

<解説>

頻出問題ですが、良く練られた良問です。副腎ホルモンに関係した病気の診断、治療を正しく理解していないと解けません。レニン・アルドステロン比が2310であり、原発性アルドステロン症のスクリーニングの上限である200を超えています。高血圧、頭痛、脱力、低カリウムより原発性アルドステロン症が最も疑わしい所見です。(a, b, d)が正解になります。

 

a 生理食塩水負荷試験                 〇 

b カプトプリル負荷試験              〇 

c デキサメサゾン抑制試験           × クッシング症候群の診断

d フロセミド立位負荷試験           〇 

MIBG 副腎シンチグラフィ       × 褐色細胞腫の画像検査

 

生理食塩水負荷試験

アルドステロン自律分泌を確認することを目的とする。本邦以外ではゴールドスタンダードとされている試験である。生食2Lを4時間で点滴静注を行い,投与前後でPRAおよびPACを測定する。PAでは循環血漿量を増加させてもPACが低下しないことを確認する。すなわち,負荷後のPAC60pg/mlを下回らない場合に陽性と判断する。心・腎機能を検査前に十分に評価を行い,高血圧ならびに低カリウム血症のコントロールが必要である。

 

カプトプリル試験

外来でも実施可能な簡便な検査である。アルドステロン自律分泌を確認することを目的としている。すなわち,ACE阻害薬であるカプトプリルによりアンギオテンシンⅡを低下させても,PACが低下しないことを確認する。カプトプリル内服前,内服60分後,90分後に採血を行い,ARR60分ないし90分後)>200を陽性と判定する。感度は優れるものの,特異度はやや低い。

 

フロセミド立位試験

レニン分泌を刺激し,レニン分泌抑制の程度を評価することでアルドステロン過剰分泌を機能的に評価することを目的とした試験である。フロセミド40mgを静注後,2時間立位を保持し,立位のまま採血を行う。循環血漿量が減少してもレニンが抑制されたままであることを確認する。2時間後のPRA値が2.0ng/ml/h未満で陽性と診断する。脳心血管イベントリスクの高い症例・不整脈が誘発されうる症例に対しては行わない。

 

<リンク>

日本内分泌学会「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine/92/Suppl.September/92_pre1/_pdf

 

原発性アルドステロン症の診断―最新のコンセンサスステートメントより―

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/35/1/35_2/_pdf/-char/ja


2020年6月9日火曜日

005 [第114回医師国家試験 A-57] 1歳6カ月男児、出生時外陰部異常


A-57
16か月の男児。出生時に外陰部の異常を指摘されていたが転居を契機に紹介され受診した。在胎39 週、出生体重3,180 gApgarスコア8点(1分)­10 点(5分)で出生した。体重10 kg、体温36.5 ℃。脈拍92/分、整。SpO2 97 %room Air­。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。亀頭の一部は包皮から露出し、外尿道口は陰茎と陰囊の移行部に確認できる。外陰部の写真別冊No. 27A、B­を別に示す。この患児にみられるのはどれか。

a 血尿
b 尿閉
c 水腎症
d 陰茎の屈曲
e 真性尿失禁

<問題文の読み方>
16か月の男児出生時に外陰部の異常を指摘されていたが転居を契機に紹介され受診した。在胎39 週、出生体重3,180 gApgarスコア8点(1分)­10 点(5分)で出生した。体重10 kg、体温36.5 ℃。脈拍92/分、整。SpO2 97 %room Air­。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。亀頭の一部は包皮から露出し、外尿道口は陰茎と陰囊の移行部に確認できる。外陰部の写真別冊No. 27A、B­を別に示す。この患児にみられるのはどれか

太字が必要な情報です。
年齢性別:         16か月の男児
主訴:               出生時に外陰部の異常
臨床所見:         外尿道口は陰茎と陰囊の移行部に確認
設問:               この患児にみられるのはどれか
の順に追っていきます。

<解説>
厚生労働省ホームページ上で写真は非公開となっています。問題文中の「外尿道口は陰茎と陰囊の移行部に確認できる」より、尿道下裂の症例と診断されます。尿道下裂は陰茎の湾曲をしばしば伴うため、(d)が正解になります。小児泌尿器の分野も出題されますので、尿道下裂のほか、停留精巣もおさえておく必要があります。

a 血尿              × 尿所見は正常
b 尿閉              × 排尿障害なし
c 水腎症           × 上部尿路への影響なし
d 陰茎の屈曲    
e 真性尿失禁     × 排尿障害なし

<尿道下裂まとめ>
疾患の概念:尿道下裂とは、尿道が陰茎の先端(亀頭)まで形成されずに、陰茎の腹側(本人から見ると陰茎の裏側)におしっこの出る口(外尿道口)がある状態。典型的例では、包皮が陰茎の背側(本人から見ると陰茎の表側)にかたより、亀頭露出。また陰茎が下向きに曲がる傾向あり。
疾患の成因:原因不明。低出生体重児に多い。性分化疾患にともなう場合もある。
疾患の症状:立位での排尿がちらばる。排尿困難はない。陰茎の曲がりが強い場合は、将来の性交に支障をきたす可能性あり。
診断・検査:外尿道口の位置や陰茎の屈曲を確認。停留精巣をともなうことがあり、精巣の位置などをチェック。
治療:外科手術(尿道形成術)。
予後:尿道下裂の手術で作成した尿道は陰茎とともに成長する。精巣(睾丸)の機能に問題がなく、性交に支障がなければ、子供を得ることは可能。手術後は、排尿などに問題がないか、経過を見る。

<リンク>
日本小児泌尿器科学会 https://jspu.jp/ippan_017.html

2020年6月8日月曜日

004 [第114回医師国家試験 A-55] 77歳男性、無症候性肉眼的血尿

A-55

77歳の男性。血尿を主訴に来院した。3か月前から時々血尿を自覚していたが、自然に消失していたため医療機関を受診していなかった。2日前から血尿が持続するため受診した。喫煙歴は20/日を50年間。飲酒は機会飲酒。身長165 cm、体重70 kg。脈拍72/分、整。血圧120/72 mmHg。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。尿所見:沈渣は赤血球100 以上/HPF。血液所見:赤血球395 万、Hb12.9 g/dLHt 38 %、白血球8,100。血液生化学所見:総蛋白6.7 g/dL、アルブミン3.8 g/dL、尿素窒素18 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL。尿細胞診はクラスV。胸腹部造影CT別冊No. 25A、B­を別に示す。この患者で正しいのはどれか。

  

 

a 再発は膀胱に多い。

b 扁平上皮癌である。

c 近位尿細管から発生する。

VHL遺伝子異常が関係する。

e 腹部ダイナミックCTで早期濃染を呈する。

 

<問題文の読み方>

77歳の男性血尿を主訴に来院した。3か月前から時々血尿を自覚していたが、自然に消失していたため医療機関を受診していなかった。2日前から血尿が持続するため受診した。喫煙歴20/日を50年間。飲酒は機会飲酒。身長165 cm、体重70 kg。脈拍72/分、整。血圧120/72 mmHg。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。尿所見:沈渣は赤血球100 以上/HPF。血液所見:赤血球395 万、Hb12.9 g/dLHt 38 %、白血球8,100。血液生化学所見:総蛋白6.7 g/dL、アルブミン3.8 g/dL、尿素窒素18 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL尿細胞診はクラスV。胸腹部造影CT別冊No. 25A、B­を別に示す。この患者で正しいのはどれか。

 

太字が必要な情報です。

年齢性別:         77歳の男性

主訴:               血尿

臨床経過:         3か月前から時々血尿

生活歴:            喫煙歴

検査結果:         尿細胞診はクラスV

設問:               この患者で正しいのはどれか。

の順に追っていきます。

 

画像の読み方:赤でくくった部分は腫瘍であり、右腎盂尿管移行部に発生した腎盂尿管がんと診断されます。右水腎症になっています。

<解説>

CTの画像で右腎盂腫瘍(右腎盂癌)を診断できるかどうかがポイントです(切り取り画像の赤色の部分)。右水腎にもなっています。CT画像で診断がつかなくても、本文中の情報より診断可能です。問題文は、尿路癌(腎盂癌、尿管癌、膀胱癌)の典型的な症例です。まず男性であること、高齢であること、無症候性肉眼的血尿があること、喫煙歴があること。尿細胞診陽性により、尿路癌以外の病気は否定されます。

上部尿路癌(腎盂癌、尿管癌)の手術症例のうち、約34割に膀胱内再発を来し、この膀胱内再発は、術後23年以内に起こるといわれています。よって正解は(a)になります。上部尿路癌の手術後は定期的な膀胱鏡検査を行います。

 

a 再発は膀胱に多い。                

b 扁平上皮癌である。                 × 尿路上皮癌が正解、ただし稀に扁平上皮癌も存在する。

c 近位尿細管から発生する。        × 近位尿細管から発生する癌は腎臓癌

VHL遺伝子異常が関係する。    × VHL遺伝子異常が関係するのは腎臓癌

e 腹部ダイナミックCTで早期濃染を呈する。 × 早期濃染は腎臓癌

 

<リンク>

腎盂尿管がん診療ガイドライン http://jsco-cpg.jp/guideline/27.html