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2020年7月23日木曜日

022 [第109回看護師国家試験(2019年度) B-33] 急性腎盂腎炎 

109Ns(2019) B-33

成人の急性腎盂腎炎で正しいのはどれか。

1.男性に多い。

2.両腎性が多い。

3.初尿を用いて細菌培養を行う。

4.原因菌はGram(グラム)陰性桿菌が多い。

 

<解説> 急性腎盂腎炎という病気を知っておく必要があります。尿の通り道は整理できていますか?腎臓実質内の糸球体で毛細血管から原尿として排出された一番最初の尿は、尿細管で再吸収と分泌を受けて本来の尿として成長していきます。集合管で集められたあと、いよいよ「尿」としてデビューします。最初に現れるのが腎盂の一番端っこの腎杯です。その後腎盂に集まり、尿管を下って、膀胱にたまります。ここまで無意識、誰も尿の存在を感じることはできません。膀胱に尿がたまって膀胱が膨れてくると初めて人間は尿を感じ取ることができます。そして最後に尿道を通して尿を排出します。腎盂・尿管・膀胱・尿道の位置関係は大丈夫ですか?基本中の基本なので、順番を間違えないように。

 膀胱にばい菌(細菌)が入り込み、炎症を起こしてしまうのが膀胱炎。急性に発症するのが急性膀胱炎。さらに細菌が尿管を駆け上がり、腎盂にまで達して、腎臓内で炎症を起こしてしまうのが腎盂腎炎。急性に発症するのが急性腎盂腎炎。膀胱は「袋」、腎臓は「実」であることを考えると、急性膀胱炎は袋の炎症なので発熱なし。急性腎盂腎炎は実の炎症なので高熱を出します。女性は尿道が短いので、膀胱内へ細菌が侵入しやすく、急性膀胱炎を発症しやすいです。それゆえ、急性腎盂腎炎も女性が多い。両方の腎臓が同時に急性腎盂腎炎になることはめったにありません。ほぼ見たことないです。膀胱内の尿は全体が感染尿なので、初尿を用いる必要はありません。急性膀胱炎の起因菌の代表はなんでしたっけ?そう、大腸菌です。大腸菌はグラム陰性桿菌です。よって、急性腎盂腎炎の起因菌の代表はグラム陰性桿菌です。

 

1.男性に多い。                                     × 女性に多い

2.両腎性が多い。                                  × 右か左かのどちらか。片側性です。

3.初尿を用いて細菌培養を行う。             × 初尿を用いる必要は全くありません。

4.原因菌はGram(グラム)陰性桿菌が多い。〇 大腸菌はグラム陰性桿菌です。

 

よって4.が正解です。できましたか?


2020年6月24日水曜日

011 [第114回医師国家試験 D-57] 65歳女性、発熱・悪寒

D-57

65 歳の女性。発熱と悪寒を主訴に来院した。意識レベルは JCSⅡ-10。身長 155cm、体 重 68 kg。体 温 38.8 ℃。脈 拍 96/分、整。血 圧 92/52 mmHg。呼吸数28分。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。右背部叩打痛を認める。尿所見:蛋白1+、糖(-)­、ケトン体(-)­、潜血1+、沈渣は赤血球 10〜50/HPF、白血球50〜99/HPF。血液所見:赤血球434 万、Hb 11.8 g/dL、Ht 37 %、白血球2,200、血小板 22 万。血液生化学所見:総蛋白 6.5 g/dL、アルブミン 2.8 g/dL、AST 19 U/L、ALT 19 U/L、尿素窒素 12 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL。CRP21 mg/dL。血液培養と尿培養の検体を採取し、生理食塩液による輸液を行ったが、血圧低下の改善はみられず、カテコラミンと抗菌薬の投与を開始した。腹部CT別冊No. 25A、B­を別に示す。

直ちに行うべき処置はどれか。

 

 

a 尿道切開術

b 膀胱瘻造設

c 経尿道的尿管砕石術

d 尿管ステント留置術

e 体外衝撃波結石破砕術

 

<問題文の読み方>

65 歳の女性。発熱と悪寒を主訴に来院した。意識レベルは JCSⅡ-10。身長 155cm、体 重 68 kg。体 温 38.8 ℃。脈 拍 96/分、整。血 圧 92/52 mmHg。呼吸数28分。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。右背部叩打痛を認める。尿所見:蛋白1+、糖(-)­、ケトン体(-)­、潜血1+、沈渣は赤血球 10〜50/HPF、白血球50〜99/HPF。血液所見:赤血球434 万、Hb 11.8 g/dL、Ht 37 %、白血球2,200、血小板 22 万。血液生化学所見:総蛋白 6.5 g/dL、アルブミン 2.8 g/dL、AST 19 U/L、ALT 19 U/L、尿素窒素 12 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL。CRP21 mg/dL。血液培養と尿培養の検体を採取し、生理食塩液による輸液を行ったが、血圧低下の改善はみられず、カテコラミンと抗菌薬の投与を開始した。腹部CT別冊No. 25A、B­を別に示す。

直ちに行うべき処置はどれか。

 

 

太字が必要な情報です。

年齢性別:         65 歳の女性

主訴:               発熱と悪寒

理学所見:         意識レベル JCSⅡ-10、右背部叩打痛

検査結果:         尿白血球50〜99/HPF L、白血球2,200、CRP21 mg/dL

臨床情報:         生理食塩液による輸液を行ったが、血圧低下の改善はみられず、カテコラミンと抗菌薬の投与を開始

設問:               直ちに行うべき処置はどれか。

の順に追っていきます。

 

<解説>

CTで右水腎(A)、右尿管結石(B)が診断されます。本文からは重症尿路感染症で、ショック状態。白血球が低下するほどの重症で危険な状態です。よって、結石関連性急性腎盂腎炎によるショック状態と診断されます。全身管理をしつつ感染源のドレナージ、すなわち右水腎の改善の処置が必要です。

尿路閉塞症状を伴う重症尿路感染症はショックで心肺停止を引き起こす場合もあり、緊急処置が必要な疾患です。

 

a 尿道切開術                 × 尿道は関係ありません。

b 膀胱瘻造設                 × 膀胱が問題ではありません。

c 経尿道的尿管砕石術     × 活動性の尿路感染の状態での施行は禁忌です。

d 尿管ステント留置術     〇 正解

e 体外衝撃波結石破砕術  × 活動性の尿路感染の状態での施行は禁忌です。

 

よって(d)が正解になります。実際の臨床では、腎瘻による尿流確保のほうが確実なので、腎瘻とするか尿管ステントを行うかどうかを検討します。ショックにより心肺停止に至り、気管内挿管腎盂呼吸に至ったなかで、緊急で腎瘻による尿流確保を行うことが時に遭遇します。体位の保持が制限されるなど、難易度の高い腎瘻造設ですが、必ず成功させなければなりません。上部尿路閉塞+尿路感染症は命に関わる重大な病であることを覚えておいて下さい。


2020年5月8日金曜日

002 [第114回医師国家試験 A-26]  38歳女性、発熱・悪寒・腹部緊満

A-26 (難問)

38 歳の初妊婦(1妊0産)­。発熱、悪寒および腹部緊満を主訴に来院した。妊娠30 週。妊娠経過は順調で胎児の発育も問題ないと言われていた。既往歴に特記すべきことはない。意識は清明。身長161 cm、体重60 kg。体温38.8 ℃。脈拍96/分、整。血圧120/74 mmHg。呼吸数20/分。胎児心拍数陣痛図で頻脈を認めるが基線細変動は中等度、一過性頻脈を認めるが一過性徐脈は認めなかった。尿所見:色調は黄色、比重1.010、pH 6.0、蛋白(―)­、糖(―)­、ケトン体(―)­、潜血(―)、沈渣に赤血球0〜1/HPF、白血球10〜19/HPF。血液所見:赤血球388万、Hb 12.0 g/dL、Ht 35 %、白血球13,100(桿状核好中球17 %、分葉核好中球61 %、好酸球2%、好塩基球0%、単球10 %、リンパ球10 %)­、血小板25万。血液生化学所見:総ビリルビン1.0 mg/dL、AST 32 U/L、ALT 24 U/L、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.5 mg/dL、血糖98 mg/dL、Na 136 mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 100 mEq/L。尿培養と血液培養の検体を採取した後にセフトリアキソンの経静脈投与を開始した。翌日、血液培養が2セットとも陽性になったと連絡を受けた。連絡を受けた時点で体温38.5 ℃、腹部緊満は持続していた。血液培養ボトル内容の塗抹Gram 染色写真別冊No. 5­を別に示す。適切な抗菌薬治療の方針はどれか。

 

a アンピシリンに変更する。

b 感受性試験結果が出るまでセフトリアキソンを継続する。

c セフトリアキソンを中止して経過を観察する。

d メロペネムに変更する。

e レボフロキサシンに変更する。

 

<問題文の読み方>

38 歳の初妊婦(1妊0産)­。発熱、悪寒および腹部緊満を主訴に来院した。妊娠30 週。妊娠経過は順調で胎児の発育も問題ないと言われていた。既往歴に特記すべきことはない。意識は清明。身長161 cm、体重60 kg。体温38.8 ℃。脈拍96/分、整。血圧120/74 mmHg。呼吸数20/分。胎児心拍数陣痛図で頻脈を認めるが基線細変動は中等度、一過性頻脈を認めるが一過性徐脈は認めなかった。尿所見:色調は黄色、比重1.010、pH 6.0、蛋白(―)­、糖(―)­、ケトン体(―)­、潜血(―)、沈渣に赤血球0〜1/HPF、白血球10〜19/HPF。血液所見:赤血球388万、Hb 12.0 g/dL、Ht 35 %、白血球13,100(桿状核好中球17 %、分葉核好中球61 %、好酸球2%、好塩基球0%、単球10 %、リンパ球10 %)­、血小板25万。血液生化学所見:総ビリルビン1.0 mg/dL、AST 32 U/L、ALT 24 U/L、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.5 mg/dL、血糖98 mg/dL、Na 136 mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 100 mEq/L。尿培養と血液培養の検体を採取した後にセフトリアキソンの経静脈投与を開始した。翌日、血液培養が2セットとも陽性になったと連絡を受けた。連絡を受けた時点で体温38.5 ℃、腹部緊満は持続していた。血液培養ボトル内容の塗抹Gram 染色写真別冊No. 5­を別に示す。適切な抗菌薬治療の方針はどれか。

 

太字が必要な情報です。

年齢性別:         38 歳の初妊婦

主訴:               発熱、悪寒および腹部緊満

重要な既往歴:   妊娠30 週

直近の症状:      体温38.8 ℃

検査結果:         白血球13,100(桿状核好中球17 %、分葉核好中球61 %)

培養:               血液培養が2セットとも陽性。

設問:               適切な抗菌薬治療の方針はどれか。

の順に追っていきます。

 

<解説>

かなりの難問です。グラム染色の写真を理解しないと解けません。

①   グラム染色の写真を判別できるか?

②   グラム染色の結果に併せた抗生剤を正しく選択できるか?

さらに、③妊婦への抗生剤選択、も問われています。

 

写真は、グラム染色の結果が「グラム陽性球菌」であることを示しています。一見、細長いので桿菌のようにも見えますが、よく見るとつぶつぶの球菌が連なっているもの(=連鎖している)で、長さもまちまちです。グラム陽性球菌と言えばブドウ球菌(スタフィロコッカス属)ですが、写真の球菌は短い連鎖を示す腸球菌(エンテロコッカス属)か、比較的長い連鎖を示す連鎖球菌(ストレプトコッカス属)の様子です。グラム染色の情報をもとに判断すると、妊婦に使用可能で、グラム陽性球菌に最も有効性の高いものは(教科書的には)アンピシリン(ペニシリン系)です。

 

<リンク>

グラム染色の意義 https://naraamt.or.jp/Academic/Gakkai/2009/seminar/point.pdf

日本細菌学会ホームページ http://jsbac.org/youkoso/staphylococcus.html

グラム染色の図鑑 https://gram-stain.com/

 

妊婦の尿路感染で、血液中に細菌が検出された敗血症の状態です。尿路感染といえば大腸菌等のグラム陰性桿菌ですので、比較的安全性の高い第三世代セフェム系のセフトリアキソンを最初に使用したのは正しい抗生剤選択です。その後、血液中のグラム染色の結果から血液中に細菌を認めました。敗血症の状態ですので、経過観察してはいけません[cは×]。グラム陽性菌なので、第三世代セフェム系の薬剤から変更する必要があります[bは×]。妊婦にはレボフロキサシン等のニューキノロン系は禁忌です[eは×]。カルバペネム系のメロペネムは広域の抗菌スペクトラムを有する抗生剤で、グラム陰性桿菌にもグラム陽性球菌にも有効です。しかし妊婦に対しては使用経験が少なく、安全性が確立していないとされています[dは×△]。この設問はちょっと悩む部分です。よって妊婦にも安全に用いることが可能な、グラム陽性球菌に感受性を示すペニシリン系のアンピシリンを即座に用いる[a]が正解になります。

 

a アンピシリンに変更する。                                            〇

b 感受性試験結果が出るまでセフトリアキソンを継続する。  ×

c セフトリアキソンを中止して経過を観察する。                 ×

d メロペネムに変更する。                                               ×△

e レボフロキサシンに変更する。                                      ×

 

<リンク>

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 

http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jaidjsc-kansenshochiryo_nyouro.pdf

妊産婦の抗菌薬使用の注意点

http://www.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/06501/065010004.pdf

 

この問いで気になるのは、本当に尿路感染なのか?という点です。女性の検尿所見で、白血球10〜19/HPF の所見が尿路感染としては弱すぎます。試験問題としては、尿中白血球 >100か、50~99/hpf 位の値を示して、敗血症が尿路感染由来らしいという手ごたえがほしいところです。なぜ基礎疾患のない妊婦にグラム陽性球菌の尿路感染が発症し、敗血症に至ったのか?何かしらの排尿障害の既往があるのではないか?など、本問題からは読み取れません。さらにCRPの値がない、尿培養のグラム染色の結果がない、など気になる点はいくつかあります。原因菌がグラム陽性球菌の代表である腸球菌と判断した場合にはバンコマイシンの使用が推奨されますので、血液培養の抗生剤感受性の結果の確認がまたれます(数日かかります)。かなりまれですがMRSAの可能性もあります。今後も類似問題が出題されると思いますので、しっかり学習しておいて下さい。