2020年6月8日月曜日

004 [第114回医師国家試験 A-55] 77歳男性、無症候性肉眼的血尿

A-55

77歳の男性。血尿を主訴に来院した。3か月前から時々血尿を自覚していたが、自然に消失していたため医療機関を受診していなかった。2日前から血尿が持続するため受診した。喫煙歴は20/日を50年間。飲酒は機会飲酒。身長165 cm、体重70 kg。脈拍72/分、整。血圧120/72 mmHg。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。尿所見:沈渣は赤血球100 以上/HPF。血液所見:赤血球395 万、Hb12.9 g/dLHt 38 %、白血球8,100。血液生化学所見:総蛋白6.7 g/dL、アルブミン3.8 g/dL、尿素窒素18 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL。尿細胞診はクラスV。胸腹部造影CT別冊No. 25A、B­を別に示す。この患者で正しいのはどれか。

  

 

a 再発は膀胱に多い。

b 扁平上皮癌である。

c 近位尿細管から発生する。

VHL遺伝子異常が関係する。

e 腹部ダイナミックCTで早期濃染を呈する。

 

<問題文の読み方>

77歳の男性血尿を主訴に来院した。3か月前から時々血尿を自覚していたが、自然に消失していたため医療機関を受診していなかった。2日前から血尿が持続するため受診した。喫煙歴20/日を50年間。飲酒は機会飲酒。身長165 cm、体重70 kg。脈拍72/分、整。血圧120/72 mmHg。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。尿所見:沈渣は赤血球100 以上/HPF。血液所見:赤血球395 万、Hb12.9 g/dLHt 38 %、白血球8,100。血液生化学所見:総蛋白6.7 g/dL、アルブミン3.8 g/dL、尿素窒素18 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL尿細胞診はクラスV。胸腹部造影CT別冊No. 25A、B­を別に示す。この患者で正しいのはどれか。

 

太字が必要な情報です。

年齢性別:         77歳の男性

主訴:               血尿

臨床経過:         3か月前から時々血尿

生活歴:            喫煙歴

検査結果:         尿細胞診はクラスV

設問:               この患者で正しいのはどれか。

の順に追っていきます。

 

画像の読み方:赤でくくった部分は腫瘍であり、右腎盂尿管移行部に発生した腎盂尿管がんと診断されます。右水腎症になっています。

<解説>

CTの画像で右腎盂腫瘍(右腎盂癌)を診断できるかどうかがポイントです(切り取り画像の赤色の部分)。右水腎にもなっています。CT画像で診断がつかなくても、本文中の情報より診断可能です。問題文は、尿路癌(腎盂癌、尿管癌、膀胱癌)の典型的な症例です。まず男性であること、高齢であること、無症候性肉眼的血尿があること、喫煙歴があること。尿細胞診陽性により、尿路癌以外の病気は否定されます。

上部尿路癌(腎盂癌、尿管癌)の手術症例のうち、約34割に膀胱内再発を来し、この膀胱内再発は、術後23年以内に起こるといわれています。よって正解は(a)になります。上部尿路癌の手術後は定期的な膀胱鏡検査を行います。

 

a 再発は膀胱に多い。                

b 扁平上皮癌である。                 × 尿路上皮癌が正解、ただし稀に扁平上皮癌も存在する。

c 近位尿細管から発生する。        × 近位尿細管から発生する癌は腎臓癌

VHL遺伝子異常が関係する。    × VHL遺伝子異常が関係するのは腎臓癌

e 腹部ダイナミックCTで早期濃染を呈する。 × 早期濃染は腎臓癌

 

<リンク>

腎盂尿管がん診療ガイドライン http://jsco-cpg.jp/guideline/27.html


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