2020年6月7日日曜日

003 [第114回医師国家試験 A-34] 84歳男性、尿量減少

A-34

84 歳の男性。全身~怠感と尿量の減少を主訴に来院した。3年前に胃癌の診断で幽門側胃切除術を受けたが、2年前から受診を中断している。3週前から全身倦怠感が出現し、5日前から尿量が減少したため受診した。意識は清明。体温36.7℃。脈拍80/分、整。血圧140/84 mmHg。呼吸数18/分。眼瞼結膜は軽度貧血様で、眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、上腹部に手術痕を認める。両下肢に圧痕性浮腫を認める。血液所見:赤血球382 万、Hb 11.1 g/dLHt 35 %、血小板10万。血液生化学所見:アルブミン3.2g/dL、総ビリルビン1.3 mg/dLAST 38 U/LALT 42 U/LLD 230 U/L(基準120245­、尿素窒素40 mg/dL、クレアチニン2.8 mg/dLNa 132 mEq/LK5.6 mEq/LCl 98 mEq/LCEA 7.8 ng/mL(基準5以下)­CA19-9 69 U/mL(基準37 以下)­CRP 2.1 mg/dL。腹部超音波検査で膀胱内に尿を認めない。胸部エックス線写真で心胸郭比56 %。腹部単純CT別冊No. 8­を別に示す。まず行う処置として適切なのはどれか。

 

a 血液透析

b 大量輸液

c 利尿薬投与

d 尿管ステント留置

e 尿道カテーテル留置

 

 

<問題文の読み方>

84 歳の男性。全身~怠感と尿量の減少を主訴に来院した。3年前に胃癌の診断で幽門側胃切除術を受けたが、2年前から受診を中断している。3週前から全身倦怠感が出現し、5日前から尿量が減少したため受診した。意識は清明。体温36.7℃。脈拍80/分、整。血圧140/84 mmHg。呼吸数18/分。眼瞼結膜は軽度貧血様で、眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、上腹部に手術痕を認める。両下肢に圧痕性浮腫を認める。血液所見:赤血球382 万、Hb 11.1 g/dLHt 35 %、血小板10万。血液生化学所見:アルブミン3.2g/dL、総ビリルビン1.3 mg/dLAST 38 U/LALT 42 U/LLD 230 U/L(基準120245­尿素窒素40 mg/dL、クレアチニン2.8 mg/dLNa 132 mEq/LK5.6 mEq/LCl 98 mEq/LCEA 7.8 ng/mL(基準5以下)­CA19-9 69 U/mL(基準37 以下)­CRP 2.1 mg/dL腹部超音波検査で膀胱内に尿を認めない。胸部エックス線写真で心胸郭比56 %腹部単純CT別冊No. 8­を別に示す。まず行う処置として適切なのはどれか。

 

太字が必要な情報です。

年齢性別:         84 歳の男性

主訴:               全身~怠感と尿量の減少

重要な既往歴:   3年前に胃癌

臨床経過:         3週前から全身倦怠感、5日前から尿量が減少

検査結果:         尿素窒素40 mg/dL、クレアチニン2.8 mg/dLK5.6 mEq/L

画像評価:         腹部超音波検査で膀胱内に尿を認めない。

設問:               まず行う処置として適切なのはどれか。

の順に追っていきます。

 画像の読み:両側水腎症、左腎委縮


<解説>

この問題は、残念ながらKEYとなるCT画像の質が悪く、良問とは言えません。画像から両側水腎を診断させる問題で、これがわからないと解答に至るのが難しい問題です。問題文からはある程度病状が把握できます。まずクレアチニン上昇にあり、腎不全(腎不全なりかけ)です。腎不全には腎前性、腎性、腎後性があります。腎後性腎不全は尿の流れが閉塞することで生じるため、どの部分で閉塞するかが重要です。問題のパターンは2つで、1)前立腺肥大症などによる下部尿路閉塞の場合は、膀胱内に尿が大量に貯留するため、両側水腎となり、腎後性腎不全に至ります。治療は経尿道的なカテーテル留置により膀胱内の尿流を確保することです。2)膀胱内に尿がなく、水腎を生じる場合は、尿管が閉塞する場合です。尿管結石などで生じる場合もありますが、本症例ではおそらく胃がんの後腹膜転移により両側尿管狭窄を生じ、両側水腎による腎後性腎不全を生じたと考えられます。左腎は委縮しており、長期にわたる閉塞が予想されます。右腎臓のみで腎機能を維持していたところで、右尿管狭窄による右水腎を生じたため、短期間で腎後性腎不全に至ったと考えられます。よって、まず行う処置は、尿流を確保するための尿管ステント留置(d)が正解となります。ちなみに、左腎は委縮しており、尿流確保する意義は少ないため、右側にのみ留置を試みます。

実臨床では、本症例の機能的片腎機能で尿管狭窄による腎不全を生じた場合は、尿管ステント留置が難しいケースがあり、腎瘻造設による尿流確保を行う場合が多いです。もし設問中に腎瘻造設があれば、それも正解になります。

 

a 血液透析                    × 透析するほどの腎機能悪化ではない。

b 大量輸液                  × 脱水の所見ではない、ショックでもない。

c 利尿薬投与                 × 腎後性腎不全に利尿薬は不適切。

d 尿管ステント留置       

e 尿道カテーテル留置   × 膀胱内に尿がない。尿閉の場合には有用。

 

<リンク>

急性腎障害診断ガイドライン 

https://cdn.jsn.or.jp/guideline/pdf/419-533.pdf

急性腎障害診断基準  

http://saigaiin.sakura.ne.jp/sblo_files/saigaiin/image/E8A8BAE696ADE59FBAE6BA96.pdf

 


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