2020年7月8日水曜日

017 [第110回医師国家試験(2015年度) A-35] 65歳男性、血尿

110(2015)-A-35 膀胱がん

65歳の男性。血尿を主訴に来院した。3か月前から時々血尿を自覚していたが、自然に消失していたため医療機関を受診していなかった。2日前から血尿が持続するため受診した。喫煙は20 /日を45年間。飲酒はビール350 mL/日を20 年間。身長165 cm、体重90 kg。血圧160/100 mmHg。尿沈渣に赤血球多数/1視野、白血球510/1視野。尿細胞診はクラスⅤ。膀胱内視鏡像を別に示す。脊髄くも膜下麻酔下で経尿道的膀胱腫瘍切除を行った。病理所見では尿路上皮癌pTa と上皮内癌とを認める。術後1か月目に施行した尿細胞診でもクラスⅤであった。

この患者の治療として適切なのはどれか。

a 膀胱全摘術

b 放射線療法

c 抗癌化学療法

d 分子標的薬投与

BCG 膀胱内注入療法


 

 

<問題文の読み方>

65歳の男性。血尿を主訴に来院した。3か月前から時々血尿を自覚していたが、自然に消失していたため医療機関を受診していなかった。2日前から血尿が持続するため受診した。喫煙は20 /日を45年間。飲酒はビール350 mL/日を20 年間。身長165 cm、体重90 kg。血圧160/100 mmHg。尿沈渣に赤血球多数/1視野、白血球510/1視野。尿細胞診はクラスⅤ。膀胱内視鏡像を別に示す。脊髄くも膜下麻酔下で経尿道的膀胱腫瘍切除を行った。病理所見では尿路上皮癌pTa と上皮内癌とを認める。術後1か月目に施行した尿細胞診でもクラスⅤであった。

この患者の治療として適切なのはどれか。

 

太字が必要な情報です。

年齢性別:         65歳の男性

主訴:               血尿

生活歴:            喫煙は20 /日を45年間

検査:               尿細胞診クラスⅤ

画像評価:         膀胱内視鏡の所見

手術と病理:      経尿道的膀胱腫瘍切除、尿路上皮癌pTa と上皮内癌

手術後経過:      術後1か月目の尿細胞診クラスⅤ

設問:               治療として適切なのはどれか。

の順に追っていきます。

 

<解説>

膀胱がんの問題です。かなり臨床的な内容ですが、膀胱上皮内癌の治療方針を知っていれば難しくはありません。逆に膀胱上皮内癌の治療方針を知らないと解けません。教科書での勉強と共に、臨床実習での経験が問われます。

 内視鏡の所見は乳頭状腫瘍で、病理結果のpTaの部分にあたります。写真からは上皮内癌(CIS)の部分は写っていません。経尿道膀胱腫瘍切除(TURBT)の結果から、筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC; non-muscle invasive bladder cancer)と診断されます。さらに上皮内癌(CIS)が病理診断されていることが最も重要です。手術後1か月の尿細胞診でclassⅤの意味は、膀胱内に上皮内癌(CIS)成分が残存していることを意味します。よってこの上皮内癌(CIS)の治療を行う必要があり、その治療法が問われています。

 

a 膀胱全摘術                 ×:膀胱全摘術は筋層浸潤性膀胱癌(MIBC)に対する治療です。

b 放射線療法                 ×:放射線は膀胱がんに対してはあまり効かない治療です。筋層浸潤癌の場合に、膀胱全摘ができない場合か、しないことを選択した患者さんには緩和的な意味合いも含めて放射線治療を行うことはあります。シスプラチンなどの抗がん剤を併用すると、若干治療効果が高まります。本症例のような筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して行うことはありません。

c 抗癌化学療法              ×:筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)には行いません。

d 分子標的薬投与           ×:膀胱がんに使用できる分子標的治療薬はありません。

BCG 膀胱内注入療法 〇:膀胱上皮内癌(CIS)に対する標準的な治療です。

 

よってeが正解になります。教科書等で、一度膀胱がんに対するBCG膀胱内注入療法の項目の部分をチェックしてください。国家試験に頻出の領域です。


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